養殖業界視点で見るビブリオ病

海水魚飼育をしていれば白点病の次に多いのはビブリオ病じゃないでしょうか。実際ビブリオが原因と気付いてないだけでこれによって亡くなってしまった魚たちは多いと思います。
養殖業界でも古くから知られているこの病気に対してどのように対処しているのか?
それについて知ることでアクアリウムにおいてのビブリオ病対策のヒントを探りましょう!
ビブリオ病~とても種類が多いビブリオ菌類
ビブリオ菌は種類がとても多いです。養殖業界で知られているものでは”Vibrio ichthyoenteri” “Vibrio anguillarum” “Vibrio parahaemolyticus“…などまだまだ種類があります。
そして種類が多いということは感染対象の魚も多いです。菌それぞれに感染しやすい魚種もありますが、そもそもビブリオ病が非常に多くの魚種が罹患します。
さらに、このビブリオ病は海水魚だけではなく、淡水魚にも、甲殻類にも、果ては貝類にまで発症します。特に魚と甲殻類を跨ぐ病気というのは意外と少ないようでして、なかなか厄介な病原菌です。(跨ぐ、と言っても魚と甲殻類ではビブリオ菌の種類は違うようですが…)
海水魚のビブリオ病への対処
ビブリオ病特有の対処ではなく細菌病全般への対処としては水産用医薬品を用いる、化学療法を用いることが多いようです。
薬の成分は抗菌性物質が主成分。この抗菌性物質には細菌の増殖を抑制する『静菌作用』と、最近自体を殺す『殺菌作用』の2種の効能がある。(ただし菌の種類によってどっちにも作用することがあるので、この2つの効果を厳密に分ける必要は無いみたいです)
そしてこの薬の投与方法の主流は『経口投与』によるもの。水槽では飼育水に薬を溶かす”薬浴”が主流ですが、養殖生簀では薬浴は難しいのでエサに薬を混ぜる経口投与が主流になってます。
アクアリウムにおいてもエサにグリーンFゴールド顆粒を混ぜる(他にも薬を溶かした飼育水に人工餌を浸してから与える方法も)という手法をとれば経口投与の効果がある程度期待できます。
水産用医薬品として使われている薬剤の一例
養殖業界で使われる薬剤の成分を一部紹介。アクアリウムの薬のパッケージを見ると見たことがある名前もいくつかありますよ~!
【オキソリン酸】
ビブリオ病やパラコロ病、類結節病など多くの細菌病に効果的。これは細菌が増殖する時の核酸合成を阻害し、菌の増殖を抑える静菌作用があります。
【スルファモノメトキシン】
ビブリオ病やノカルジア症に効果的。これも核酸合成阻害の静菌作用がある。”スルファ”→サルファ剤の”サルファ”とほぼ同じ。サルファ剤=最近の増殖を抑制する薬として医療現場で聞くことがあるかも?
【オキシテトラサイクリン】
ビブリオ病や連鎖球菌症に。こちらはタンパク質の合成阻害。
【チアンフェニコール】
ビブリオ病や類結節症に。これもタンパク質合成阻害。
他にも薬剤の成分はあります。薬のパッケージを見て成分を調べてみると治療のメカニズムを知ることが出来て面白いかもしれません。
淡水魚のビブリオ病
鮎やヤマメなどマス類の養殖で古くからビブリオ病は知られており、1950年代には病気が知られていたようです。
早期に認知されたことで研究が進んでいたのでワクチンが開発されているので、薬の経口投与以外にもそちらが活用されているようです。ただ、ワクチンの投薬治療が繰り返されたことで耐性を持った病原体が発生して問題になったこともあるようです。とはいえ、水槽内では耐性持ちのビブリオ菌が発生することは少ないと思いますが。
甲殻類のビブリオ病
特にエビの養殖場で発生することが多かったようです。原因は飼育環境の悪化によってエビがストレスを受けることが発症トリガーと言われているようですね。
なお対処としてはエビたちにも経口投与による対処が主流になっているようです。
甲殻類は病気が発生すると感染が早いようです。エビの養殖をしている方の話を聞いたことがありますが、病気によってある日突然生簀内のエビが全滅して億を超える損害が出ることもあるようです…恐ろしい
【ちなみに】善とも悪とも言える、水槽内のビブリオ菌の立ち位置
養殖業界という記事の本筋とは離れますが…
ビブリオ菌と言うのは”常在菌”でして。海でも水槽内でも何処にでも、ほぼ間違いなく存在する細菌です。
ビブリオ病に悩まされたアクアリストは多く、ネガティブなイメージを持っている方が多いでしょう。
しかし常在菌であるがゆえなのか、良い面もあるんです。それが『分解者』としての役割。ビブリオ菌はライブロックのキュアリングに役立つ存在なんです。ライブロックの有機物を分解して徐々にキレイな状態に戻す役割があります。これはビブリオ菌が持つ強力なタンパク質分解能力によるもの。ただそれゆえに海水魚の細胞にも影響を及ぼしてしまうんですが…
