

アンモニアとアンモニウムの違い

アクアリウムをやってると稀にこんな現象が起こります。
「アンモニア試薬はぶっちぎりの危険値なのに、魚は全然元気にしている…」こんな状況。
猛毒であるアンモニアが大量に検出されているのに、誰も死なずに元気にしている…という謎の状況。
これについて解説しようと思います…!
実はアンモニアとアンモニウムはまるで別物!
アンモニアNH₃とアンモニウムNH₄⁺。似ているのでアンモニアと一緒にしがちですが、実はだいぶ性質が違います。まずはコチラを説明しましょう。
NH₄⁺ ←右上に”⁺”が付いているのでこれはイオンになります。
前の記事で触れましたが、イオンっていうのは言うなれば『素材』。そしてNH₃は『完成品』。
アンモニウムイオンNH₄⁺はアンモニアNH₃を作り出す素材と考えてください。
このNH₄⁺は、 NH₃ + H⁺ = NH₄⁺
このようにアンモニアに水素イオンがくっついて出来てます。
このアンモニウムイオンNH₄⁺が水素イオンH⁺を削り出すと完成品であるアンモニアNH₃が出来上がる構図です。
アンモニウムは無害だが、アンモニアは超有害!
そして素材であるアンモニウムイオンNH₄⁺は特に害が無いんですよね。魚に吸収されることが無いんです。
しかしアンモニアNH₃になると途端に有害物質になり、魚のエラから吸収されて呼吸を阻害し酸欠状態をもたらす、いわゆるアンモニア中毒が起きます。
アンモニウムにはpHが超重要!
ではアンモニウムNH₄⁺はどのような条件下でアンモニアへ変貌してしまうのか?
ここで重要になるのがpHなんです。
このアンモニウムはpH7.0あたりを境目に、7.0以上になるとアンモニアに変わり始めてしまいます。
↑で「アンモニウムイオンNH₄⁺が水素イオンH⁺を削り出すと完成品であるアンモニアNH₃が出来上がる」と表現しましたが、
水がアルカリ性になるというのは『水素イオンH⁺が水酸化イオンOH⁻より少ない状況』です。
そうするとNH₄⁺から水素イオンH⁺が放出されてNH₃に変わっていってしまうんですね。
そのためpHが高いとアンモニア中毒のリスクが高くなります。
逆に言えば、酸性寄りの水ではアンモニア中毒の危険性がグッと下がるわけです。
冒頭の答え:試薬で検出されてるのはアンモニアではなくアンモニウムだから
ここまで話せば冒頭の「アンモニア試薬でアンモニアが大量検出されてるのに魚が死なない理由」がわかったのではないでしょうか。
この時に検出されてるのはアンモニアNH₃ではなく、アンモニウムイオンNH₄⁺だからです!
ここで冒頭の写真の試薬の画像を見てください↓



よく見るとラベルに『NH₃/NH₄』って書いてますよね?
この試薬、アンモニアNH₃とアンモニウムイオンNH₄⁺、両方の総量を測ってるんです。
これはRedSea社の試薬ですが、他社メーカーのアンモニア試薬もだいたい同じで両方の総量を測ります。
なぜかというと↑で説明した通りNH₄はすぐにでもアンモニアに変わる可能性があるため、両方測らないとこの水が安全かどうかわからないからです。pHなんて常に変動してますからね。
【まとめ】
- アンモニアNH₃とアンモニウムNH₄⁺は別物と考えよう
- アンモニアNH₃は有害だが、アンモニウムNH₄⁺は無害
- 試薬はアンモニアNH₃とアンモニウムNH₄の両方を計測する
- 試薬が危険値でも魚が死なないのはアンモニアじゃなくてアンモニウムが検出されてるから
なお、ここまでお読みいただくとわかると思いますが、この現象は海水魚水槽ではほぼ見ません。淡水魚の水槽で起こる現象ですね。
海水魚水槽は基本的にpH8.0付近ですので、アンモニウムのままの状態ってのがあまり発生しませんので。

