日本一有名な毒?!~フグ毒(テトロドトキシン)~

誰だってフグが猛毒なのは知ってますよね?でもフグ毒の名前は知ってますか?
今回は最も有名であろう、『フグ毒~テトロドトキシン』についての解説です!なぜフグはこの毒が大丈夫なのか?からこの毒が効く仕組みまでお話しします。
”転ばぬ先の杖”ということでこの毒について知り、安全なマリンアクアライフを楽しみましょう!
テトロドトキシン(tetrodotoxin)
フグ毒として有名なテトロドトキシン。化学式はC₁₁H₁₇N₃O₈。毒性は神経毒。熱では分解されないので煮沸消毒なんてのは無駄無駄…
非常に強力な毒として、人類史上でも古くから知られています。これは人だけでなく他の生物たちも同様。フグを襲う生き物は非常に少なく、その有毒性が生き物の遺伝子レベルで知られていると言えるでしょう。
トンビだってフグは絶対に食べない
おもしろいエピソードがありまして、昔ご近所さんが漁で捕れた魚を船の上に広げて放置しておいたんです。その中にはフグも混じってごちゃ混ぜにしていたんです。
翌日船に戻ってみると、フグ以外の魚は全部トンビが捕っていってキレイさっぱり無くなっていました。フグは1匹たりとも減ってなかったそうです。
トンビといった鳥たちですら絶対にフグを間違って食べることは無いようです。
(不思議なのは『フグが有毒』という情報をどう子に伝えているのか?鳥同士の言語コミュニケーション能力があるのか、はたまた遺伝子に刷り込まれているのか?…生き物の不思議はつきません)
フグはどうやって毒を持つのか
これについても有名ですが、フグは自分でこのテトロドトキシンを作っていません。食べ物から摂取して蓄えていくことで有毒化するんです。
毒の発生元は細菌の『ビブリオ属菌』『シュードモナス属菌』と言われています。これらをエサとして摂取する生き物たちを食べることでフグの体内に毒が溜まっていくんです。
細菌類→ゴカイ・貝類→カニ・エビ→フグ
という感じに毒が継承されていきます。これを『生物濃縮』と言いますね。これでフグが人を殺められるぐらいの有毒生物になるんですね。
このことから、「生まれたときから毒を摂取しなければ無毒のフグができる!」ということで無毒フグの養殖がなされてますね。ただし種類によっては卵の段階で有毒だったりするとかで、生まれる前・親魚の段階から取り組まなければいけないとかも聞いたことがありますね。なんにせよ大変な苦労の末の無毒フグです。
テトロドトキシンの毒の仕組みは?
なぜフグは毒が効かないのか?
「フグは自分で毒を作ってない」となると真っ先に浮かぶ疑問が
なんでフグは毒が効かないんだ??

というところです。先に結論を言うと「フグの神経にはテトロドトキシンは関係ない」ということになります。ただこれだけだとわからないと思うので、もうちょっと踏み込んで話します。
テトロドトキシンの毒効
詳しく話すと高校生物の神経の構造の話になるので、どこまで話すか…という感じですが汗 できるだけかいつまんで話しますね…
まずテトロドトキシンは神経毒ということで、神経に作用する毒です。
神経と言うのは電気信号をリレーで伝えるものなんですが、その役割を担う器官に『イオンチャネル』というものがあります。イメージとしてはそのチャネルは箱のようになってて、そこに開閉式の出入り口があります。ここをナトリウムイオン(Na⁺)って物質が出たり入ったりすると電気が発生します。
このイオンチャネルの出入り口は空きっぱなしや閉じっぱなしにならないようになってるんですが、テトロドトキシンはこの出入り口を閉じっぱなしにしてしまう毒なんです。
しかしフグの神経は他の生物と使われてる素材が違ってまして、テトロドトキシンがあってもイオンチャネルの活動に全く影響が出ないんです。
なのでフグはテトロドトキシンを分解してるとかではなく、体内にいくらあっても何ら影響が出ないので毒が効かないわけです。
他にもいる、テトロドトキシンを持つ生き物たち
テトロドトキシンはフグ以外も保有する生き物が何種類も確認されています。
ヒョウモンダコ、ツムギハゼ、スベスベマンジュウガニ。さらには昔はそこらじゅうにいて採取して遊んだ人も多いだろうアカハライモリもテトロドトキシンを持つことが知られてます。
ヒョウモンダコやツムギハゼ、スベスベマンジュウガニはフグと同じ海中の細菌類からの生物濃縮で間違いないだろうと言われていますが、アカハライモリはどこから毒を蓄えているのかまだ明らかになってないそうですね。イモリも土中の細菌類からの生物濃縮と同じだとは思いますが…

アクアリウムでフグ毒に注意するとすれば…
フグ毒・テトロドトキシンについて解説しましたが、基本的に毒を摂取するのはフグを食べたとき。
水槽で飼育しているフグを食べちゃうなんてことは万が一にも無いですよね…??なので基本的にアクアリストがテトロドトキシンの危険にさらされることは無いと思います。
もしその可能性があるとするなら、この子を飼育している方かもしれません。

コチラはマリンアクアでもよく導入される”シマキンチャクフグ”。
このフグはテトロドトキシンとサキシトキシンという2種類の猛毒を持ってます。見た目に反して毒性はけっこう凶悪…。でも性格は温厚、他の魚も毒があるのをわかっているので攻撃されることもありません。
ただ刺激を受けると体表の粘液から毒を出す、との話もあります。なのでこのフグを素手で触った後に手洗いもせずに食べたり目を擦ったり…という行動にだけはご注意ください…!!
なお、このシマキンチャクフグは亡くなると水槽内に毒が放出されることもあったりするので、亡くなったらすぐに取り出してあげることをオススメします。
このシマキン爆弾で水槽が大事になったことはメンテナンス業者ならあるあるの経験なんじゃないでしょうか…?汗
ただ亡くなってもノーダメージのこともあったりして、どうなってるのかは正直解明できてません…おそらく水槽の環境・濾過能力の違いとかによるものだと思います。シマキンがワイルドか、採取から水槽でどのくらい経過していたか…などいろんな要因があるでしょうけどね~
それと、↑で紹介したヒョウモンダコ、あのブルーリングが美しいので時々アクアショップに流通します。購入する人は絶対に嚙まれないよう気をつけてくださいね。
フグと逆の毒成分、トリカブト
ちなみに。。このテトロドトキシンと逆の効果で有毒性を発揮するものがあります。

それがトリカブト。これも有毒な植物として有名ですね。
トリカブトの毒はアコニチンというものを主とした複数の毒が含まれています。
そしてこのアコニチンってのは、イオンチャネルを開けっぱなしにする神経毒です。これが開けっ放しになると電気信号が送り続けられて体が自由に動かせなくなるんです。テトロドトキシンと逆の作用で猛毒になってるんです。
フグ毒とトリカブト毒で中和ができるんじゃ??
毒と薬は紙一重といったもんで。トリカブトも漢方薬として使われてたりもするんです。
では【反対の作用を持つフグ毒とトリカブトの毒を両方摂取したら中和されるんじゃないか?】という興味本位もあるんじゃないでしょうか。
これについてはおそらく、キッチリ正確に毒成分を均整とって摂取すれば、理論上可能なんじゃないか?と考えられます…が、それはほぼ不可能なんじゃないでしょうか。こういった天然の毒素は個体差が激しいので、重量を合わせても毒の含有量が全然違っていたり…均整を取るのは無理でしょう。
実はこれを利用した毒殺事件が過去に日本で起きてるんです。1986年の『トリカブト保険金殺人事件』です。
これは保険金目当ての殺人事件で、フグ毒とトリカブト毒を何らかの方法で相手に飲ませて殺害されたそうです。
そしてこの両方の毒を混ぜた理由と言うのが、『毒が効く時間を調整してアリバイ作りをするため』でした。テトロドトキシンとアコニチンが正反対の効果を発揮することでお互いの効力を打ち消しあったんです。そして最終的に残った方の毒が効果を発揮して殺害に至ったという事件です。
この事件の調査の中で、テトロドトキシンと逆の効果を発揮するアコニチンが効力を打ち消すという実験結果が得られたようです。なので両方の毒を均整とって摂取すれば理論上、中和が可能なんじゃないかと重いわけです。
とはいえ、この事件で死者が出てますし危険だし理論上の話なんで、絶対にやらないようにしてくださいね…!
【まとめ】
- フグ毒はテトロドトキシンという神経毒
- フグは自分で毒を作らず食べ物から蓄積している
- フグは神経の構造上、この毒が効かない
- フグ毒を持ってる生き物を触った時はよく手を洗いましょう!
