白点病~養殖業界ではどう研究されてる?

おそらくアクアリウムにおいてもっとも有名な病気”白点病”、きっとアナタも経験したはず…
養殖業界でも昔から猛威を振るい、研究されてきた内容について見ていきましょう。
アクアリウムにおける解決のヒントになるはず…
白点病とは?
言わずと知れた、魚に白い粉を吹いたような点々が付着する病気。これは白点虫と言われる寄生虫による病気です。
白点病は淡水魚でも海水魚でも発生しますが、同じように見えて病原体はそれぞれ別物なんです!
この違いが対策の面で重要になってくるので覚えておきましょう。
淡水魚の白点病はIchthyophthirius multifiliis(イクチオフチリウス)、海水魚の白点病はCryptocaryon irritans(クリプトカリオン)で別種になります。
ちなみに分類上では”綱”の段階から分かれています。淡水のイクチオフチリウスが貧膜口綱、クリプトカリオンは前口綱になっているよう。
白点病の生活環(成長サイクル)
白点病の原因体、白点虫は5つの段階があります。
1.寄生期(成虫) トロホント
魚の体表に寄生している
2.離脱後 プロトモント
魚に寄生して十分成長したら魚から離れる
3.底砂潜伏期 トモント
魚から離れたプロトモントが底砂の中に潜伏し、トモントという被嚢状態になる
4.増殖期 トマイト
トモントという被嚢の中で細胞分裂を繰り返し娘細胞を作る
5.浮遊期 セロント
増殖したトマイトが放出されて感染幼虫のセロントが水中に漂う。このセロントが魚に付着し、また寄生が始まる
このような5つの段階を繰り返して白点虫は繁殖してます。
淡水のイクチオフチリウスは20℃前後の水温では魚の体で7~12日間過ごし、魚から離れたあとほぼ1日以内に砂に潜ります。
海水のクリプトカリオンは25℃前後だと魚の体で3~4日間過ごしますが、その後は4~14日で感染幼虫を放出する。この期間はだいぶムラがあるようで特定はされていないようです。
そして感染幼虫のセロントは淡水でも海水でも数時間~1日しか生きられず、その間に魚に寄生できなければ死滅するようです。
白点病の被害状況
寄生されると体表組織の壊死が起きたり、重症化すると浸透圧調節障害、呼吸障害が起こります。
軽度であれば死には至らない白点病ですが、養殖生簀では限られた空間に何百匹もいるため爆発的に増殖するので被害が大きくなります。
マダイやカンパチの養殖生簀で白点病が蔓延すると数千万~数億円の被害が出ることも…
予防法は?
生簀では潮通しの良い場所に移動すること、
水槽環境では換水頻度を上げることや底砂掃除が有効。
どちらも虫体を減らして感染を抑制するのが目的です。
治療法は?
観賞魚では硫酸銅やマラカイトグリーンで虫体を殺すことが有効。
しかし養殖業(食用魚)ではこの薬を使うことができません!
でも硫酸銅・マラカイトグリーンの代わりに塩化リゾチーム製剤というものが水産薬として認可されていました。
他にも生活環を断つことを目的に、キレイな水槽に移す作業を繰り返して虫体を除去する方法があります。
淡水では1日1回入れ替えを2週間ほど、海水では3日に1回入れ替えを3回ほどすることで虫体を除去できます…が、かなり手間ですね…
なお淡水のイクチオフチリウスについては25℃以上に温度を上げると繁殖が抑制されて治療することができます。
アクアリウムに活用できる対策は?
養殖業界における白点病について見てきましたが、最後にアクアリウムに活用できそうなポイントをまとめてみましょう!
まず治療には硫酸銅やマラカイトグリーン系の薬浴が有効です。
注意したいのが淡水浴。白点病は寄生虫病なので浸透圧で虫体を除去できそうですが、寄生している時は魚の粘液の下に潜り込んでるので効果が薄いです。これは薬浴もそうですが…
薬浴が有効なのは、白点虫が水中を漂っている時だけになります!『魚から離れた時』と『幼生が放出された時』ですね。魚に寄生している時や砂に潜っている時はあまり効果が出ません。
淡水魚の白点病には温度を上げるのが有効ですね。「25℃以上で繁殖を抑制」と書きましたが、27~30℃くらいにした方が効果は見えやすいイメージ。ただし魚が高水温に弱いこともあるし、水草はほとんどが弱るので上げ過ぎは要注意です。
最後に白点虫の生活環からの対策。それは感染幼虫のセロントの寿命が非常に短いので魚を隔離してセロントの寄生を回避すること。
極端な話、この期間だけ魚を別の水槽に隔離してやれば生存できずに白点病を滅することができるわけです。…ただ水槽内の白点虫が全員同じタイミングでセロントを放出してくれるわけ無いので、上に書いた何度も入れ替えをするはめにはなりますが。。。
以上、養殖業界の知見から白点病を知る回でした。アナタにとっての新情報はあったでしょうか?
