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嫌気層では何が起きている?

#マリンアクアリウム#水槽メンテナンス業者#水槽飼育#飼育難易度

嫌気層…酸素が届かない分厚い砂やライブロックの奥に発生する領域。普通の水槽飼育においては硫化水素が発生するので嫌気層を作らないようにしたいところですが、一方で栄養塩を減少させる還元作用もあり、サンゴ水槽では有効に活用すれば水槽飼育の上達の一助になります。

この嫌気層について、いったいどんなことが行われているのか見ていきましょう。

嫌気層が発生する環境とは?

一般的に砂の底の方で発生するとされていますが、実際どのぐらいの深さで発生するのか?

当然それは環境によりけりですが、よく5cm以上砂を厚くすると発生するとは言われますね。

ただ状況次第では2cm厚の砂でも発生はします。もちろんこれは砂粒の大きさによります、それによって砂粒の間を水が通る具合が変わりますので。

しかし2cm以下の厚さでされば、ほとんどの水槽環境でも嫌気層の発生を回避できると考えてよいでしょう。

それと砂に気を取られて見逃しがちですが、ライブロックの奥底でも発生します。

人工ライブロックでは可能性は低くなりますが、天然ライブロックは小さな穴が無数にある多孔質構造なので意外と嫌気層が発生する環境です。

あとは、砂の厚さを2cm以下にしていてもライブロックの置き方によってはライブロック下の砂で嫌気層が発生することがあります。

嫌気性バクテリアの住処、嫌気層

嫌気性バクテリアはその名の通り酸素が無い嫌気層で活動します。

この嫌気性バクテリアの活動を理解することで栄養塩の減少をコントロールしたり、硫化水素を過度に恐れる必要も無くなるでしょう!

栄養塩を”還元”する嫌気性バクテリア

嫌気性バクテリアは酸化物を還元することでエネルギーを得て活動しています

”酸化物”を説明すると、NO₃やPO₄を見るとわかるように酸素元素”O”が入っている成分。例えばPO₄はリンPに酸素が結合してPO₄になっています。『酸素が結合』→”酸化している”という理解で大丈夫です。

そして”還元”というのは酸化したものから酸素を取り出すこと、酸化する前の物質に戻す=還元するという活動ですね。例えば

NO₃→NO₂→N₂

というように硝酸塩を最終的に窒素ガスまで戻し、大気中に放出されることで水槽内から硝酸塩が消滅するのが嫌気性バクテリア(=脱窒菌)の還元です。

デトリタスを分解する嫌気性バクテリア

嫌気性バクテリアは栄養塩だけでなく水槽内の汚れ・堆積物のデトリタスも分解します。

と言ってもこれに関しては好気性バクテリアと嫌気性バクテリア、2つのバクテリアの活動が必要。

まず好気性バクテリアの『バチルス菌』がデトリタスの有機構造を分解することで、嫌気性バクテリアが消費できる状態まで変えてくれます。それを嫌気性バクテリアの『ビブリオ菌』などが分解することでデトリタスを分解してくれるんですね。分解速度は遅いですが、これでデトリタスを吸い出さずに消し去ることも可能なんです。

なお、バチルス菌がデトリタスを分解するときに酢酸などの成分が分離されるようです。これが嫌気性細菌の炭素源(エサ)になります。

この酢酸、添加剤のNO₃PO₄Xや、深志のアクアリストが使用していた味醂・酢の役割を果たすものですね。

NO₃PO₄X
↑RedSea社の添加剤『NO₃PO₄X』

それと、”炭素源”ってワード、ちょっとイメージがしにくいんですよね…炭素ってなんか無機質な鉱物的な感じがするもんで…

この炭素源について少し言うと、↑の酸化物のように『炭素源は炭素が結合したもの』という認識でOKです。

例えば酢酸はCH₃COOHで、炭素Cが入ってます。そしてバチルス菌がデトリタスを分解して生成されるものの一つがグルコースC₆H₁₁O₆。こちらも炭素Cが入ってますね。なので炭素源なんです。

硫化水素を生み出す嫌気性バクテリア

これが嫌気層の最大のデメリットである、硫化水素の発生。これも嫌気性バクテリアの活動で発生するものです。

これは『硫酸還元菌』と言われる部類の嫌気性バクテリアの活動なんです。

水中の硫酸塩SO₄(≒硫酸イオン)を還元すると硫黄Sが残るんですが、この時に硫化水素H₂Sが発生するんです。

硫黄Sは海水中にも存在する元素なので、これと酸素が化合して硫酸イオンが発生するので結果として硫化水素の発生に繋がるんですね。

なお、硫化水素はカルサイト系の底砂だと比較的結合しやすいようなのでトラブルを予防しやすくなるようです。

嫌気層の還元がオールドタンクシンドロームの原因

嫌気性バクテリアの活動が栄養塩を還元させるというメリットがわかりましたが、それが大きな問題にもなってしまってます。

オールドタンクシンドロームって聞いたことがあるでしょうか?

これは長期間水槽を維持していると硝酸塩やリン酸塩が下がらなくなる現象。水替えしてもこれらの値が全然下がらなくなるんです。(硝酸塩はけっこう下がりますが、すぐ戻ります…そしてリン酸塩は水替えしても全く下がらないくらい…)

これは底砂(ライブロック)の炭酸カルシウムに結合した硝酸塩やリン酸塩が嫌気層で還元されることによって流出するからなんです。

理論上結合している硝酸塩やリン酸塩が溶けきったらもう流出しないのですが、水槽で生き物を飼っている以上栄養塩は追加され続けるので、オールドタンクシンドロームの状態が時間経過で解除されることは無いと言っていいでしょう。

嫌気層のメリットが逆にデメリットになってしまっているのです。

ではこのオールドタンクシンドロームの問題を回避する方法はあるのか?そのあたりをオールドタンクシンドローム単独の記事で触れていこうと思います。

【まとめ】

  • 嫌気層は嫌気性バクテリアの住処
  • 嫌気層は2cm以上の底砂でも発生する可能性がある(砂粒の大きさによる)
  • 2cm以下なら嫌気層の発生確率はグッと下がる(砂粒の大きさによる)
  • 嫌気性バクテリアが栄養塩を還元するメリットがある
  • 還元するときに硫化水素を発生させるデメリットがある

メリット/デメリットがある嫌気層。これを理解して上手くコントロールすればより良い水槽環境が出来上がることでしょう!毒を薬にできるよう理解を深めていきましょう。

この記事の著者

AQUASCAPE

首都圏でアクアリウムの大手メンテナンス会社に勤務し2000回以上のメンテナンスを経験。
アクアリウムの魅力を広げるため初心者向けのコンテンツからディープな話まで幅広く情報発信をしている。
個人宅の水槽からオフィス・クリニックの水槽まで、前職の経験に基づいたアドバイスを提供していきます。
1991年生まれ。

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