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硝酸塩が栄養塩と言われるプロセス

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化学イメージ

一昔前は悪い成分として扱われていた”硝酸塩NO₃”。しかしこのNO₃は『栄養塩』と呼ばれ、文字通り生物の栄養にもなる存在。

近年は硝酸塩を添加する添加剤が使用されたり、一定数残すことが水質管理の目標になっています。

「NO₃は有害なのか栄養なのか、どっちなんだ?!」と混乱してしまいます…

そこで、NO₃がどういうプロセスで栄養になるのかを学習していきます。

硝酸塩NO₃はどうやって栄養に変わるのか?

キーワード『窒素源』

『窒素源』というワードを聞いたことがあるでしょうか?植物の育成をしてる方は肥料の成分の話題でよく聞くかもしれません。

窒素Nは生き物が体を作るときに必要な成分です。タンパク質やアミノ酸、DNAなどを作るときに必要になります。(リン酸塩でお馴染みのリンPもほぼ同様。アミノ酸やDNAに必要)

硝酸塩NO₃にも窒素Nが入っていますよね?この窒素Nを利用するので、硝酸塩は『窒素源』と言われ、栄養になるんです。

窒素Nは利用しやすいカタチがある

窒素と言えば、大気中の78%は窒素ガスN₂です。栄養である窒素が大気中には山ほどある、ということは植物は栄養取り放題…ということにはならないんですよね~

窒素元素Nが2つくっついた窒素ガスN₂ってのは、生き物は直接利用することが出来ないんです。

窒素は”イオン”って状態にしないと利用できないんです。イオンってのは記号の右上に”+”や”-”がついてる状態のヤツで、いわゆる『素材』だと思ってください。そして素材を合成して出来たN₂だったりNO₃ってのが『完成品』。栄養にするには『素材』の状態の方が生き物は使いやすいんです。

そしてこの窒素Nを含む素材と言うのが『窒素源』でして、アンモニウムイオンNH₄⁺だったり硝酸イオンNO₃⁻です。

硝酸塩NO₃は利用しやすいカタチの硝酸イオンNO₃⁻という形態がある

よく耳にする硝酸塩NO₃ですが、これは硝酸カルシウムCaNO₃や硝酸マグネシウムMgNO₃…など様々な形態があり、その総称を硝酸塩と呼んでいる。例えば

硝酸カルシウムCaNO₃ = Ca²⁺ + NO₃⁻

硝酸マグネシウムMgNO₃ = Mg²⁺ + NO₃⁻
※化学式省略してます、正確にはもっと複雑です

というように硝酸イオンNO₃⁻という素材が何かにくっついて硝酸塩となっています。

サンゴの褐虫藻がNO₃からNO₃⁻を利用してエネルギーに変換する

そしてサンゴに共生している褐虫藻は、NO₃からNO₃⁻を利用して窒素Nを使えるようにします。

NO₃は水に溶けやすく、水中ではイオンの状態(NO₃⁻とCa²⁺など…がペアになってる状態)で存在しているようです。そのNO₃⁻を使います。

『硝酸還元』でアンモニウムイオンNH₄⁺を作り出す

NO₃⁻は褐虫藻の『硝酸還元』という活動で

NO₃⁻ → NO₂⁻ → NH₄⁺

という形に変化していきます。この硝酸還元は褐虫藻だけでなくバクテリアや菌類の分解活動で発生するようですね。

そして↑の項で解説した”窒素Nを利用しやすいカタチ”であるアンモニウムイオンNH₄⁺が生み出されたわけです。

こうしてNO₃がサンゴの栄養として使えるカタチに変わったわけですね。

※NH₄⁺に変換せずともNO₃⁻からそのまま窒素Nを利用することは可能なようです。→このあたりを解説してる明林永二様の記事

窒素源(NH₄⁺他)をどう利用されるのか?

さて、NO₃が栄養にしやすいカタチ、窒素源(NH₄⁺など)に変わりました。ではこれは何に利用されるのか?

このNH₄⁺は褐虫藻が利用してアミノ酸の素材になり、

このアミノ酸からサンゴの色素タンパク質(CP)や蛍光タンパク質(FP)が作られます。つまりサンゴの色が作られてるんですね。

アミノ酸は生物の動力源ですし、そこからサンゴの美しい色彩が作り出されている。そのために窒素源が必要、つまり栄養塩が必要なんです。

栄養塩がダメージになるのはどういう時なのか?

ここまで栄養としての良い面を話しましたが、これがなぜダメージにもなってしまうのか?

この栄養塩であるNO₃⁻が多すぎると問題が起きます。

実は褐虫藻がNO₃⁻をNH₄⁺に硝酸還元する時に還元しきれず、アンモニウムイオンNH₄⁺ではなく一酸化窒素NOや二酸化窒素NO₂が発生します。 (※二酸化窒素NO₂と亜硝酸は別物です)

この一酸化窒素NOや二酸化窒素NO₂はサンゴの体組織や色素タンパク質CP、蛍光タンパク質FPにとって有害であり、これらを破壊してしまいます。

こうしてサンゴが色落ちして、いわゆる”茶色石化”という褐虫藻の色だけの茶色いサンゴが出来上がってしまうわけです。

それゆえに過剰なNO₃はサンゴの毒になってしまう、ということでした。

【まとめ】

  • 硝酸塩NO₃は窒素源として栄養になるため栄養塩と呼ばれる
  • 窒素Nは利用しやすいカタチ”イオン”の状態である必要がある(=窒素源)
  • NO₃は褐虫藻の活動によってNO₃⁻、NH₄⁺などのカタチに変化することで窒素Nを利用できる
  • NH₄⁺などから取り出した窒素Nはアミノ酸を作り、サンゴの色素の基になる
  • 過剰なNO₃(NO₃⁻)はサンゴや色素を破壊する

このようなプロセスを経て栄養塩は栄養になったり毒になったりするわけでした。

この記事の著者

AQUASCAPE

首都圏でアクアリウムの大手メンテナンス会社に勤務し2000回以上のメンテナンスを経験。
アクアリウムの魅力を広げるため初心者向けのコンテンツからディープな話まで幅広く情報発信をしている。
個人宅の水槽からオフィス・クリニックの水槽まで、前職の経験に基づいたアドバイスを提供していきます。
1991年生まれ。

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