吸着剤について

こんにちは!今回も閲覧ありがとうございます。
愛媛で水槽メンテナンスサービスをしております、AQUASCAPEです。
今回は吸着剤について、概要を説明したいと思います。
吸着剤とは?
吸着剤というのは『いらない成分を減少させるアイテム』です。
例えば茶ゴケのもとになるケイ酸塩だったり、リーフタンクで頭を悩ます過剰なリン酸塩だったりを除去するのに使用します。特にリン酸塩除去のために吸着剤を使ってる方は多いんじゃないでしょうか?
どんな仕組みで成分を減少させてるかというと、主なものが『化学反応』によるものです。
例えばリン酸塩 PO₄ と鉄 Fe を化学反応でリン酸鉄 FePO₄ にすることで水中のリン酸塩を減少させるんです。
吸着剤は特定の物質だけを狙って減らすことができるので
「硝酸塩はちょうどいいけどリン酸塩だけ高い…」という時にリン酸塩を狙い撃ちで減少させることができます!
吸着剤を使う時は
- 定期的な交換(効果が無くなったら or 1~3か月目安)
- 水通りがいいところで使う
ここを注意しましょう!
定期的な交換を怠ると吸着した成分の放出が起きる可能性も…
そして吸着剤は水と接することで効果を発揮します。水流がない止水域で使っても効果が出ないので気をつけましょう…
吸着剤紹介
アルミナ系吸着剤

こちらは『アルミナ系』と呼ばれる吸着剤。画像はseachem(シーケム)さんのPhosGuard(フォスガード)。
“アルミナ”ってワードからピンとくるかもですが、いわゆる”アルミ”を主成分にした吸着剤です。(もっと言うと酸化アルミニウム)
主にリン酸塩を吸着するときに使います!でも硝酸塩やケイ酸塩も吸着できるみたいですよ~!
アルミニウム Al + リン酸塩 PO₄ = リン酸アルミニウム AlPO₄
※正確な組成式は省略させていただきます…
こういう化学反応でリン酸塩を別の物質に変換してリン酸塩濃度を下げてくれます!
ここでは詳しく紹介しませんがコトブキ工芸さんが出してる【P CUT(ピーカット)】に入ってる白い粒もコレだって言われてますね。
使用感としては「緩やかに長期間吸着効果を発揮できる」って気がしました。
「緩やかに~」って部分について
さっさとリン酸塩を下げたいんだけど!?即効性が欲しいんだが!?

って声もあるかもしれませんが、その場合は別の吸着剤がありますので…汗
あと「緩やかに~」って部分はメリットでもあります。サンゴは急激な変化を嫌うので、むしろ緩やかに下げた方が変動ショックで弱るリスクを回避することができるでしょう。
また、ICPテスト1とかしたことある方は「アルミナ系を使ってるとアルミニウムの溶出が心配…」って経験もあるでしょう。筆者もあります。
このアルミの溶け出しですが、適切なpHの水なら基本溶け出さないそうです。(pH8.0前後の水とか)
それともう一点溶け出す条件が、バクテリアの還元活動によってアルミが溶け出すことがあるそうです…
これを防ぐには定期的な清掃をしたり、濾材の中に混ぜ込まないようにするとか対策すればある程度防げるそうです。吸着剤は定期的な交換が必要なのでそんな取り出しにくいところには入れないと思いますが笑
あと交換頻度ですが、これはリン酸塩とかターゲットの数値が変化しなくなったら交換がベストです。
ただあえて目安を言うなら1~2か月ってところでしょうか。
鉄系吸着剤

次は『鉄系』と呼ばれる吸着剤。鉄と言っても主に酸化鉄 FeO が主成分のようです。こちらはリン酸塩吸着特化!って感じの製品で、ほぼリン酸塩との化学反応を狙ってます。
鉄 Fe + リン酸塩 PO₄ = リン酸鉄 FePO₄
っていう反応でリン酸塩を減らします。
ちなみに、リン酸鉄 FePO₄ は不溶性で水に溶けないので、基本吸着されたリン酸塩が溶け出すってことはないです。↑のリン酸アルミニウムも同じ不溶性です。
ただ、リン酸アルミニウムと同じってことは溶け出す条件もほぼ同じ感じみたいです。
そしてこの鉄系の使用感ですが、「即効性が高い分、効果の持続は短い」と感じました。
なので「リン酸塩が1ppm超えてる」とかで早く減らしたいときは鉄系がいいと思います。
おそらく吸着量に限界があるので、2週間くらいの早めのサイクルでガンガン交換して早期にリン酸塩を下げたいときにオススメしたいです。
それと、リン酸鉄は嫌気性細菌の活動でリン酸塩が分離して水中に出てきちゃうそうです…!
なので吸着剤はしっかり水が通りやすい場所に置きましょう。アルミナ系も同様です。
最後に紹介するリアクターとかは『水通りが良く吸着効果UP & 嫌気を防ぐ』こともできるのでオススメです。
ケイ酸塩吸着剤

↑で触れたので、こちらも紹介しましょう。
これは何系かと言うと『アルミナ系』でアルミニウムが主成分の吸着剤なんですが、
神畑養魚株式会社さんが出してる【ケイ酸塩吸着剤】です。
ケイ酸塩→珪酸塩は茶ゴケの素である珪素と考えてもらえればOKです。
これを減らしてくれるんで茶ゴケで悩んでいる方は使ってみるといいでしょう。
実は筆者はちょっとしか使ったこと無いんですが……汗
基本的に吸着剤に頼らず別の要因を潰して茶ゴケは対策してるんですが。。
過去に一度だけ、どうやっても茶ゴケが治まらない現場があったんですが、
原因は水道水でした。
なぜかそのお宅の水道水、異様に珪素がたくさん入ってたようでして…
その現場ではコチラの製品で対応して解決したことがありました。
基本的にはRO水(純水。DI水)を使えば問題ないんですがね…
高層マンションとか水槽が大きくなるとRO水運ぶのがほぼ不可能な現場もあるもんでして…汗
RO水など水換えの水を準備してメンテに行く業者さん多いと思うんですが、筆者が勤めてた場所はそっちの方がマイナーでした。
なので水持参する業者さんは高層マンションとかの依頼受けないって事例も聞いたことあります。
ゼオライト系

ゼオライトは主成分をシリカやアルミナで、アンモニアを吸着する効果があります。
吸着剤というより底砂や濾材として売られているゼオライトを見たことがあるんじゃないでしょうか?
実は吸着剤としてゼオライトを元にした製品も売られています。
アンモニア吸着と言っても、基本的に水槽が立ち上がっていれば濾過のチカラですぐにアンモニアを分解してくれるので、吸着剤の目的で導入される方は少ないかもしれないですね。
ただこのゼオライト、吸着したアンモニアを比較的容易に放出してしまう面もあるようなのですが、
それを利用して硝酸塩がゼロになるのを防ぐために導入するというワザを使っている方もいました…
活性炭

生活で馴染み深い『活性炭』。消臭剤として活用されているのはご存じと思いますが
実は水槽でも吸着剤として大活躍します。
活性炭は今までの『化学反応で吸着』とは少々仕組みが違っておりまして…
調べてみたんですが何やら物理法則みたいなものが絡んでいるようで、、、
仕組みを嚙み砕いて説明しようにも難しくて断念しました…スイマセン
分かりやすく説明すると炭の多孔質な構造を利用して『小さな穴の中にいろんな成分を閉じこめてしまう』っていう感じです!
そして活性炭の効果ですが
- 黄ばみの原因(クミン酸etc)を吸着して透明度を上げる
- 臭い取り
- 有害な重金属の除去
- 薬の成分を回収する
とけっこう多機能です!!
『特に薬の成分を回収する』ってところがけっこう便利でして。
魚の治療用水槽(トリートメントタンク)で治療が終わった後、活性炭を入れて循環させておけばほとんど成分を回収してくれます。
治療で魚病薬を使うのは専用の別水槽でやるのが鉄則ですが、いろいろな事情からやむを得ず本水槽に薬を入れてしまった方…活性炭である程度回復できる可能性ありです。
逆に言うと魚病薬を入れる水槽の活性炭はあらかじめ取り出しておきましょう!薬を全部吸着されて意味無くなるので…
あと補足として、水槽の変な臭いも取ってくれるのは経験済みなんですが
実は活性炭はアンモニアはあまり吸着してくれません。
コレどうやら水中のアンモニア(→アンモニウムイオン)はほとんど吸着できないみたいです。。
消臭剤の活性炭は空気中のアンモニアなんで効果があるそうですよ~。
そして、↑の画像で使わせていただいた活性炭ですが弱点が一つありまして
活性炭はリン酸塩をかなり放出します!
なので海水で活性炭を使用する際は製品選びに注意しましょう。

なぜリン酸塩が出なくなるか、これは確かな情報源があったわけでは無いんですが…おそらく”酸処理”という工程を通すことで炭に含まれてるリン酸塩をほとんど排出してから活性炭を作っているからだと思います。
浄水器とか水の清浄化で酸処理した活性炭が活躍しているみたいですね。
そして画像のRedSeaさんが出してる活性炭『リーフスペックカーボン』はリン酸塩をほとんど出さないようになってます!
あとコチラの製品、使ったら水の透明度かなり上がります…!!
実際使ってみて、すごくコスパが良い製品だと感じました。オススメです!
リアクターで吸着剤を効率的に使う

吸着剤を効率的に使うには通水性、つまり適度な水流が必要です。
それに最適なのがこの『リアクター』です!
バイオペレットリアクターやメディアリアクターって名前で売られてるかな。
今まで吸着剤を使っても効果が実感できなかった方、もしかしたら使い方が悪かったかもしれません…。
そんな方はちょっと値は張りますがこちらのリアクターを検討してみるのもいいでしょう!
※リアクターで吸着剤使用するときの注意!
吸着剤が舞い踊るような勢いにならないようにしてください!!特に鉄系吸着剤だと粒が擦れて水が赤茶色になってしまいます…!ネットに入れて動き回らないようにして、フツフツ動いてるくらいだと大丈夫でした。
また、外部フィルターを使われている方は濾材の上に吸着剤をセットするのがいいです。こちらも満遍なく水が通る場所なので!ものによってはバクテリアの還元作用による放出が心配ってとこぐらいしかデメリットはないので。
【まとめ】
- 吸着剤は特定の成分を減少させるのに便利
- アルミナ系、鉄系、活性炭などいくつか種類がある
- 定期的な交換を忘れずに!1~3か月くらいが目安だが成分が変化しなくなった時がベストタイミング
以上、吸着剤についてでした!
- ICPテスト:通常の試薬では測れないような微量元素まで測定できるサービス。ストロンチウム、モリブデン、アルミニウム、錫(すず)、臭素…などの項目も測定できます。飼育水を海外に発送して検査するので有料になります。 ↩︎
